Levi-Civita記号の恒等式の証明



以下の文章ではEinsteinの縮約が使われています。

連続体力学や電磁気学を勉強すると「Levi-Civitaの記号」なるものと出くわします。使い慣れるとなかなか便利な記号ですが、使いこなすために

\(\epsilon_{ijk} \epsilon_{ilm} = \delta_{jl} \delta_{km} -\delta_{jm} \delta_{kl}\)

という恒等式を知っておく必要があります。ただしこの恒等式の証明がやたらと厄介で、本を読むとやけに技巧的な証明だけが載っており、初学者にはまず意味不明です(それとも私だけか...)。というわけでこの式の泥臭い証明を考えてみます。

方針としては左辺のijkとilmに注目して場合分けを行ってから取り組もうと思います。
よって

i) \(j=k\) かつ \(l\neq m\)
ii) \(j\neq k\) かつ \(l=m\)
iii) \(j=k\) かつ \(l=m\)
iv) \(j\neq k\) かつ \(l\neq m\)
として

i) \(j=k\) かつ \(l\neq m\) のとき
(左辺) \(= 0\)
(右辺) \(= \delta_{jl} \delta_{jm} -\delta_{jm} \delta_{jl}=0\)
よって
(左辺) \(=\) (右辺)

ii) \(j\neq k\) かつ \(l=m\)
i)と同様にして
(左辺) \(=\) (右辺)

iii) \(j=k\) かつ \(l=m\)
(左辺) \(= 0\)
(右辺) \(= \delta_{jl} \delta_{jl} -\delta_{jl} \delta_{jl}=0\)
よって
(左辺) \(=\) (右辺)

iv) は、以下の4つに場合分けできる
iv-A) \(j\) < \(k\) かつ \(l\) < \(m\)
iv-B) \(j\) < \(k\) かつ \(l\) > \(m\)
iv-C) \(j\) > \(k\) かつ \(l\) < \(m\)
iv-D) \(j\) > \(k\) かつ \(l\) > \(m\)

iv-A) \(j\) < \(k\) かつ \(l\) < \(m\) のとき
以下のような表を作る
添え字式の値
jklm左辺右辺
1212
1213
1223
1312
1313
1323
2312
2313
2323

添字\(j\), \(k\), \(l\), \(m\)に数字を代入して式の値を求める。例えば、
\(j=l=1\) かつ \(k=m=2\) のとき
(左辺) \(= \epsilon_{i12} \epsilon_{i12} = 0\cdot 0 + 0\cdot 0 +1 \cdot 1 = 1\)
(右辺) \(= \delta_{11} \delta_{22} -\delta_{12} \delta_{21}=1\)

この様にして表を完成させるとすべての場合で
(左辺) \(=\) (右辺)
が成り立つ
添え字式の値
jklm左辺右辺
121211
121300
122300
131200
131311
132300
231200
231300
232311

iv-B) \(j\) < \(k\) かつ \(l\) > \(m\) のとき
\(m=L\), \(l=M\)とおけばiv-A)と同様に
(左辺) \(=\) (右辺)
が成り立つ

iv-C) \(j\) > \(k\) かつ \(l\) < \(m\) のとき
\(k=J\), \(j=K\)とおけばiv-A)と同様に
(左辺) \(=\) (右辺)
が成り立つ

iv-D) \(j\) > \(k\) かつ \(l\) > \(m\) のとき
\(k=J\), \(j=K\), \(m=L\), \(l=M\)とおけばiv-A)と同様に
(左辺) \(=\) (右辺)
が成り立つ

i),ii),iii),iv)より証明終了


以上のように証明できたものの、この式の証明は一人一人が考えてみるのがよいでしょう。ただし結構しんどいです。

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